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zoom RSS YAMAHA SESSION II 912P(712P)は名器か?鈍器か? h/w

<<   作成日時 : 2014/07/18 11:33   >>

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 不人気機種であるストラトタイプの912P,712Pともに、某有名楽器店での上限買取価格はせいぜい7〜8千円。人気機種SA-1000(セミアコ)の上限買取価格3万円を大幅に下回ります。(当時の実売価格は全モデルともに大体10万円弱でした)
 ちなみに912P,712PのピックアップはSSH構成であり、SSS構成の903P,703Pというモデルもあります。

 何故、912P,712Pともに楽器店での買い取り価格の評価が低いのか…
 私は912P及び712P(SA-1000も)を持っていますので、実際の所をレビュー・評価報告したいと思います。

【まずは結論から】
・912P,712Pの魅力
 -高い質感と、ワークマンシップ。
 -良質なアルダー材をフンダンに使った贅沢なボディー
 -当たりの個体であれば、太くツヤやかなハイエンドギタークラスのサウンドが得られる(ストラトとはサウンドの傾向が異なる)

・912P,712Pの欠点
 -ナット部分で1〜3弦及び4〜5弦の間隔と比較すると、3−4弦間の間隔のみが幅が広い
 -ローラーナット周りの構造が良くないため、チューニングをあわせづらい
 -ピックアップのサウンド品位が低く、交換しないとギターのポテンシャルを引き出せない
 -ネックヒール部が長く(原則)標準的なストラト・タイプのネックに交換する事はできない

・まとめ
 -2〜3万円を支払って、当たり・ハズレが分からないオークションで購入する価値はない。
 -仮に1万円程度でネックのコンディションが良く、鳴りの良い個体が手に入るなら買っても損はない。
 -少数のファンには価値があるギターかもしれないが、一般的にはお勧めできるギターではない。


【詳細報告】
(A)質感、組立精度(=ワークマン・シップ)について
 912P,712Pともに工場で大量生産される前の世代のギターですので、質感及びワークマン・シップは、アメスタ・ストラト(おそらくラインで製作されている)等よりは圧倒的に良好です。
 またボディーは、良質なアルダー材がたっぷり使われており、更にその表面・裏面に薄いシカモア材が貼り付けられ、トラ杢っぽく見え豪華です。
 但し、ワークマン・シップに依存しすぎている傾向があり、912Pと712Pではネックやピックガードが完全互換ではありません。
 1本毎に、職人さんがネックジョイント部の組み合わせ具合や、ピックガードの取り付け位置を適宜調整している様で、例えばコンディションが良好な712Pのネックを、912Pに移植しようとしても、困難な場合があります。
 また、短い期間しか製作されなかったにも係らず、仕様にバラつきがあり、ミディアム・ジャンボ・フレットのモデルと、ジャンボ・フレットのモデルが混在します。

(B)時計職人が作った様に精密な?ローラーナット周りについて
 ローラーナット及び一体型ストリングガイドは、912P,712Pの致命的欠点です。
 この仕組みを採用しているために、1本の弦をチューニングすると、他の弦のチューニングまで変わってしまい、素早く正確にチューニングする事が困難です。
 また「時計職人が作った様な精密な構造」という表現は不適切だと思います。
 ストラトのブリッジのコマを分解・組立できる方なら、マイナスの精密ドライバー1本で、簡単に分解・メンテできるレベルの構造です。
 加えて、このローラーナットでは1〜3弦及び4〜5弦の間隔と比較すると、3−4弦間の間隔のみがわずかに幅が広く、左手の自然な演奏感にこだわる方には向かないと思われます。
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 私の場合、ローラーナットは接着剤(後に剥せる程度の強度の)で回らない様に固定しています。
 また、一体型ストリングガイドは取り外し、ストラトの様な1・2弦のみに対するストリング・ガイドを取り付けています。
 この方が実戦では圧倒的に使い勝手が良好です。

(C)搭載ピックアップについて
 912P,712Pともにピックアップは良くありません。
 912Pのアクティブ・ピックアップは、回路部分の設計が古いせいかホワイトノイズが多く不快なサウンドです。また、712Pに搭載されているdesigned by EMGのパッシブ・ピックアップは、造りは頑丈で丁寧ですがサウンドの品位は高くありません。
 ちなみに、ピックアップには実質的な価値はありませんので、ボディー構造が同じである912Pと712Pの価値は同等と考えてよいと思います。
 80年代と比較すると、現在は廉価で良い音のピックアップの製造方法がほぼ確立されましたので、例えば、一万円強で買えるAXL社のストラトタイプのギターに搭載されているAlnico5磁石を使用したdesigned by EMGのピックアップの方が(シャキ・シャキ系ではありますが)サウンド・レスポンスともに優れている様に思います。
 2万円台で買えるDEAN ZELINSKY のストラトのピックアップであれば、まちがいなく912P,712Pよりもサウンド(ご本家ストラトよりは若干ダークですが…)は優れていると思います。
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 私はジャズ志向なので、912Pの方は、フロントにレールタイプのDP188を取り付けています。また、712PのフロントにはShallerのS6(P90の様なサウンド)を取り付けています。
 いずれにせよ、ギター本来の良質なサウンドを生かす為には、ピックアップ交換を前提として考える必要があると思います。

(D)ヒール形状が特殊なネックについて
 912P,712Pのネックはヒールの部分(=ボディーと接合する部分)が、ストラトより長いため、サスティーンや鳴りは、ストラトより良好です。(当たりのギターの場合にはという条件付きですが…)
 但し、トラストロッドの調整がネックを外さないと出来ない方式であるため、使い勝手は良くありません。
 また、特殊な形状のネックですので、ストラトの様に簡単にネック交換をする事は、基本的にはできません。(特注ネックを製作するには少なくとも3〜5万円程度の費用がかかると思われます)
 但し、ネック交換に慣れている方であれば、ヒールの長さを補うスペーサー等を自作しグルー等で接着する事により、ストラト用のネックを912P,712Pに取り付ける事は可能と思われます。 
 私も実験のつもりでチャレンジしましたが、スペーサーの厚みが不適切であったため、オクターブチューニングが、ブリッジの駒の調整範囲外となってしまい、ストラト用の汎用ネックへの交換に失敗しました。
 なお、ネック交換の際には、ピックアップ側のネック固定ネジの穴×2か所が、ネックのヒールの端に近い位置になりますので、下穴を丁寧にあけておかないと、固定ネジ締め込み時にヒールが割れる懸念がありますので要注意です。

(E)ピックアップ取り付け位置とサウンドについて
 912P,712Pのネックは、ヒールの部分がストラトより長いため、フロント〜リアのピックアップの間隔がストラトより狭くなっています。
 ヒール部分の構造、ボディー材の構成、ピックアップのレイアウトがストラトとは異なるため、形状はストラトに似ていますが、ストラトの様なベルトーンや透明感は感じられません。
 912P,712Pのサウンドは豊かでツヤやかで太いのです。ストラトとはサウンドの志向性が異なるギターなのだと思います。

(F)912P,712Pは出荷時仕様のままで使えるか?
 出荷時の仕様のままでは、912P,712Pともに実戦に耐えるギターとは言えないと思います。
 例えば、仮に2〜3万円でネック・コンディションとサウンドの良い中古を手に入れても、更にピックアップ等の購入で少なくとも1万円程度が追加で必要な事を考えると…
 実売価格4万円弱で買える「隠れ名器」の SQUIER Classic Vibe Stratocaster '50s 等の新品を購入した方が、保障も付き安心ですし、サウンドに対する満足度も高いと思います。(←このモデルはアメスタ・ストラトよりも圧倒的にサウンドが良好です。個体差はありますが…)
 逆に1万円前後で、もしネック・コンディションとサウンドが良好な912P,712Pを手に入れられるならば、買っても損はないかと思います。
 ちなみに、912P,712Pともに生産台数は多くありませんので、手に入れる為には、オークションを利用する事になると思います。
 しかし、オークションではギターのあたり・はずれを購入前に確認できませんので、現時点では912P,712Pを購入対象として考えない方が賢明かと思います。


 冒頭で、912P,712PとSA-1000(セミアコ)を引き合いに出しました。
 SA-1000は、型番が0001〜3000であれば、オリジナルのままでウォームで太い素晴らしいセミアコ・サウンドが得られます。(当たりのギターの場合にはという条件付きです…)
 912P,712Pは、造りと材が良いのですが、実戦で使える様にするためには、ピックアップ交換等の追加の費用と、手間がかかります。また、ナット部分で微妙に弦間ピッチが不均一な点については、解消方法がありません。その為、912P,712Pの評価が低いのではないかというのが私見です。

 この通り、基本的には912P,712Pの価値は高くはありません。しかし、サウンドが素晴らしく良い「当たり」の個体が存在するのも事実です。そのため、一部のファンは、様々な不便に目をつぶって、これらのギターを現在も使い続けているものと思われます。

ではでは
PS 私の712Pのヘッドには型番のロゴがありませんが、店頭では712Pというロゴのあるヘッドの個体を見かけた事があります。
ちなみにWeb上では912Jや712Jというモデル名も散見されますが、PとJの仕様の違いは良く分かりません。

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